重要文化財 木造薬師如来坐像 1躯 平安時代 多田幸寺多田幸寺は、寺伝によるともともと天台宗の巨刹であった。寿永二年木曽義仲の兵火にかかったと言われているが、この像は寺伝を称するに堂々たる薬師像で、長浜市内で最古の遺宝である。像高は等身より大きく、一木よりなり、頭部には大粒な螺髪を持ち、魁偉な風貌は大きな体躯とそれを含む彫の深い法衣の衣文線とともに重厚な感じを表現している。 この系統の仏像は京都市神護寺の薬師如来像にも見られるもので、奈良時代の彫刻が密教の影響を受けて更新されたのである。その神秘性、量感、宗教的威圧感は密教彫刻に共通する特色である。またこの堂々たる体躯は現実的な感覚を妨げず、像の輪郭のうちに豊かな官能をみなぎらせている。平安前期末葉のものであろう。 |
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