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中世

虎御前山城の歴史と構造

虎御前山城は、戦国時代、浅井氏の居城である小谷城を攻略するため、織田信長が前線基地として築いた山城である。虎御前山の歴史と構造について見てみよう。

虎御前山について


空から見た虎御前山

虎御前山は、長浜市中野町と長浜市湖北町河毛、湖北町別所にまたがる標高約230mの山である。戦国時代、織田信長が浅井氏の居城である小谷城を攻略するため築いた付城(陣城)として知られる。
元亀元年(1570)6月、姉川の合戦で信長軍に破れた浅井長政は、小谷城に籠城する。 信長は、横山城(長浜市石田町・堀部町、米原市朝日)に前線基地を置き、浅井氏攻略を図るが、元亀3年(1572)7月以降は小谷城包囲のため、小谷山の眼前にある虎御前山に砦を構え持久戦に備えた。 虎御前山では大規模な築城工事が行われ、木下秀吉(のちの豊臣秀吉)が城番(定番)に任命されている。
虎御前山は、四方の見通しがきく独立丘陵で、小谷城からわずか500m余りの距離に位置することから、前線基地を築くのに適していた。また、山の尾根上には古墳が点在しており、信長はこれらを巧みに生かしながら砦を構築、山全体に家臣を配置させたと考えられる。 現在の虎御前山には、麓から北へ伝多賀貞能たがさだよし伝蜂屋頼隆はちや・よりたか伝丹羽長秀にわ・ながひで伝滝川一益たきがわ・かずます伝堀秀政ほり・ひでまさ、伝織田信長、伝木下秀吉、伝佐久間信盛さくま・のぶもり伝柴田勝家しばた・かついえの陣地跡が残る。

虎御前山について

信長の一代記として知られる『信長公記(しんちょうこうき)』では、虎御前山城について次のように記す。

巧みに仕上げられた砦の結構なことは、これまで見聞きした多くの砦に見られぬもので、みな眼を見張ったものである。 信長公がお座敷から北をご覧になると、浅井・朝倉勢は高峰大嶽おおづくへ登って砦に籠もり、いかにも攻略しがたい様子。 西は琵琶湖の水が満々とたたえられ、はるか向こうにかすむのは比叡山八王子のあたり。 (中略)どこを向いても眼に及ぶ限りの景色や、頑丈に造られたご普請のありさまなど、いずれも口に出しては表現しようもない程、素晴らしい眺めであった。
(※現代語に改めている)

虎御前山から東を見ると、伊吹山系の肩越しに美濃路へ通じ、西には広々とした田園地帯と琵琶湖を望むことができる。 現在、小谷山との間には北陸自動車道が走るが、この地が北陸への交通の要所であることを物語っている。 また、山の姿を見ても、小谷城に近い北側は急峻で、南側にはなだらかな山裾が広がるなど、まさに小谷城攻めの拠点として相応しい山と言えるだろう。 虎御前山の尾根は南北に長く、南尾根の標高140mを測るあたりは、別に「八相山(はっそうざん)」と呼ばれる。 『信長公記』でも区別して呼称しており、信長は虎御前山城と横山城を繋ぐ押さえとして、八相山と宮部村(長浜市宮部町)に要害を築くよう命じている。

虎御前山から宮部村までの道筋は、たいへんな悪路であった。 軍勢の通行の便をはかるため、道の幅を三間半(約6m)の広さに高く盛り上げ、敵方(小谷城)に向けて、道路の縁には高さ一丈(約3m)の築地を長さ50町(約5㎞)にわたって築かせた。 この築地と敵方との間には、川をせき止めて水を流し入れ、味方がたやすく往来できるようにした。」(※現代語に改めている)

虎御前山城の遺構

虎御前山の遺構は、一部破壊されている部分もあるが、比較的良好に 残されている。
山の最高所に位置する「く」の字形の曲輪(くるわ)(伝織田信長陣)は、北・東・西の三方を高い切岸で防御されており、ここを中心に南側の砦(伝堀秀政陣・滝川一益陣)は堀切と竪堀を使った防御がなされる。 また、最も小谷城に近接する伝木下秀吉陣は、三角形の曲輪を中心に、周囲に帯曲輪が巡らされるなど、ここが最前線であったことを窺わせる。

虎御前山城図

天正元年(1573)8月、小谷城総攻撃が仕掛けられ、9月1日に長政が自刃して浅井氏は滅亡、小谷城攻略戦に終止符が打たれ、虎御前山城は廃城となった。

資料

別紙「虎御前山城図 個人蔵」

教科書との関連

  • 中学社会「歴史的分野」(日本文教出版)81頁《第3編「中世の日本」 ③室町幕府と下剋上 4立ち上がる民衆と戦国大名》
  • 103頁《第4編「近世の日本」 ①中世から近世へ 3ヨーロッパ人の来航と信長》

参考文献

  • 滋賀県教育委員会『滋賀県中世城郭分布調査』7(1990年)
  • 長浜市長浜城歴史博物館『戦国大名 浅井氏と北近江‐浅井三代から三姉妹へ-』(2008年)
  • 長浜市文化財保護センター「小谷城攻略の前線基地 虎御前山城」(2009年)
  • 中井均編『近江の山城 ベスト50を歩く』(サンライズ出版)

写真

上空から見た虎御前山