長浜市史
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長浜市史をひもといて
vol.07 御維新長屋とその後の彦根藩士
 幕末維新の激動は、彦根藩井伊家の領地であった湖北長浜をも直撃しました。彦根藩は藩主井伊直弼が桜田門外の変で暗殺された事件の後、それまでの直弼の政治手法などが咎められ、10万石の減封処分を受けてしまいます。それは彦根藩の全領地のおよそ3分の1にあたる大規模な削減で、彦根藩にとっては大打撃でした。そして、長らく彦根藩であったものが幕府に返納される対象となった村々では、お殿様が変わるという事で、少なからず混乱があったのです。その後も、尊皇攘夷運動などで国内が乱れる中、彦根藩は翻弄され、結局、彦根藩は倒幕へと動いてゆくこととなるのです。そして彦根藩は、明治維新までその命脈を守り通します。
 しかし、時代の移り変わりと共に彦根藩士はその禄を失い、多くの武士たちが路頭に迷うこととなってしまいました。特に江戸藩邸詰めの武士たちは深刻で、ほとんどの者が江戸の生まれであり、彦根に戻っても縁故はなく、たちまち暮らしに困る者たちが出はじめたのです。その窮状を救ったのが浅見又蔵(1839―1900)でした。
 浅見又蔵は、長浜の地場産業である縮緬の製造から身をおこした人物で、長浜の町役をはじめ重職を歴任し、長浜町長にも就任するなど、明治時代の長浜の政財界をリードする一方で、鉄道の敷設や湖上交通の整備など長浜の近代化に尽力し、明治20年(1887)には慶雲館と呼ばれる和風建築の豪壮な迎賓施設を建設するなど、長浜の文化の発展にも大きく寄与した人物です。
 又蔵は、資金を出して長浜の米川沿いの一箇町を開発し、ここに長屋を建設して多くの旧彦根藩士の暮らしを救ったといいます。その長屋は「御維新長屋」と呼ばれ、現在もその一部が家屋として残っています。
 この御維新長屋については、『長浜市史』の第7巻「地域文化財」の172ページから173ページに記載されていますので、ぜひご参照下さい。
御維新長屋
▲かつて彦根藩の旧臣が
暮らしたという御維新長屋
バックナンバー
vol.01 さくら道と柴田源七
vol.02 能面打ち井関家と七条町足柄神社の春祭
vol.03 永久寺町蛇組の蛇の舞と国友花火陣屋
vol.04 薬袋主計と潤徳安民碑 人びとの暮らしを救った彦根藩の武士
vol.05 長浜の紅葉の名所・後鳥羽神社
vol.06 郡上のあだ討ち 日本で最後となった武士の仇討ち
vol.07 御維新長屋とその後の彦根藩士
vol.08 豊国神社十日戎とえびす講 長浜町衆の秀吉信仰
vol.09 石田三成のふるさと長浜
vol.10 郷里五川と樽番 水の差配をめぐる歴史と民俗
vol.11 長浜の「石」のはなし二題 秀吉の愛した「虎石」と「名犬メタテカイ」の伝説
vol.12 姉川地震 百年前に湖北を襲った大震災
vol.13 小堀遠州と小室藩の盛衰
vol.14 糸の世紀・織りの文化シリーズ1「浜蚊帳」
vol.15 糸の世紀・織りの文化シリーズ2「浜縮緬・その1」
vol.16 糸の世紀・織りの文化シリーズ3「浜縮緬・その2」
vol.17 糸の世紀・織りの文化シリーズ4「湖北の養蚕・その1」
vol.18 糸の世紀・織りの文化シリーズ5「成田思斎の業績(湖北の養蚕・その2)」
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