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長浜市史をひもといて
vol.13 小堀遠州と小室藩の盛衰
小堀遠州像(五先賢の館蔵) 小堀新介屋敷跡碑(小堀町)
▲小堀遠州像(五先賢の館蔵) ▲小堀新介屋敷跡碑(小堀町)
 戦国時代末期から江戸時代初期にかけて、一級の文化人として世に知られた小堀遠州政一。彼のルーツは、ここ湖北・長浜の地にあります。
 遠州を生んだ小堀一族は、元々坂田郡小堀村(現在の長浜市小堀町)を根拠地とする土豪でした。遠州の父・小堀新助政次は、浅井氏滅亡後の長浜に着任してきた羽柴秀吉の弟である秀長に仕え、その家臣として、太閤検地の実施など、主に実務的な分野で頭角をあらわしてゆきます。政次の嫡男として、天正7年(1579)に小堀村に生まれた遠州は、父の出世に従って各地を巡ります。そして関ヶ原合戦後の慶長9年(1604)、亡くなった父の跡を受け継いで働くようになるのです。
 茶道や作庭など、文化人として知られる遠州ですが、二条城の築城や、伏見奉行の職務など、彼は行政面でも数々の業績を挙げています。特に大坂城落城後には近江国奉行に任じられ、近畿地方の難しい政治を担ってもいるのです。遠州の出生地小堀町には、こうした遠州の業績を称えるべく、顕彰会が発足して、記念碑が立てられるなどその遺徳が偲ばれています。
 元和5年(1619)、遠州は故郷の近江湖北の浅井郡に一万石余の領地を得ます。遠州は正保4年(1647)に亡くなり、その跡を継いだ息子の政之は、領地のひとつ、現在の長浜市小室町に陣屋を建設します。ここから小室藩がはじまります。小室藩の陣屋は、藩主が住まう館と、それを取り囲むように家老や家臣団の屋敷が配置され、藩の政治機構が整えられました。この後小室藩は、政之・政恒・政房・政峯・政方(まさみち)と、遠州を含めると6代にわたって続いてゆくのです。
 しかしながら、歴代の小室藩の藩主は、ほとんどこの小室の陣屋には居なかったといいます。小堀家は遠州以来伏見奉行をはじめ幕府の重要な役職に就いていたので、主に江戸に居たのです。そこで、小室藩の実際の治世は、陣屋にいた家臣達が担っていました。ところが、こうした体制は次第にほころびを生み出してゆき、小室藩の財政は徐々に悪化してゆきます。そして、第6代藩主の政方(まさみち)の時代に、領民への借財や増税などでこの難局を乗り切ろうとした小室藩は、幕府からそのことを咎められ、ついに天明8年(1788)、改易されてしまうのです。
 改易された小室藩は、借金の返済のため、遠州以来収集してきた数々の美術工芸品を失い、さらには藩の屋敷の部材まで競売にかけられてしまいます。こうして、小室藩の陣屋や家臣団の屋敷は跡形も無くなってしまい、その跡地には植林が施され、遠州以来140年続いた小室藩小堀家は、歴史の舞台から消え去るのです。
 現在、かつて小室藩の陣屋が置かれていた付近には、小室藩が祀ったとされる山王社(現日吉神社)や稲荷社や弥勒堂などの祠堂、家老の和田宇仲の屋敷に湧き出ていた泉から引かれているという宇仲池などに往時をしのぶばかりです。
 小堀遠州と小堀氏の史跡に関しては、『長浜市史』第二巻「秀吉の登場」の401ページから415ページまでと、『長浜市史』第7巻「地域文化財」の88ページから89ページ、そして288ページから289ページにかけて詳説されていますので、あわせてご参照ください。
小堀遠州顕彰碑(小堀町)
▲小堀遠州顕彰碑(小堀町)
バックナンバー
vol.01 さくら道と柴田源七
vol.02 能面打ち井関家と七条町足柄神社の春祭
vol.03 永久寺町蛇組の蛇の舞と国友花火陣屋
vol.04 薬袋主計と潤徳安民碑 人びとの暮らしを救った彦根藩の武士
vol.05 長浜の紅葉の名所・後鳥羽神社
vol.06 郡上のあだ討ち 日本で最後となった武士の仇討ち
vol.07 御維新長屋とその後の彦根藩士
vol.08 豊国神社十日戎とえびす講 長浜町衆の秀吉信仰
vol.09 石田三成のふるさと長浜
vol.10 郷里五川と樽番 水の差配をめぐる歴史と民俗
vol.11 長浜の「石」のはなし二題 秀吉の愛した「虎石」と「名犬メタテカイ」の伝説
vol.12 姉川地震 百年前に湖北を襲った大震災
vol.13 小堀遠州と小室藩の盛衰
vol.14 糸の世紀・織りの文化シリーズ1「浜蚊帳」
vol.15 糸の世紀・織りの文化シリーズ2「浜縮緬・その1」
vol.16 糸の世紀・織りの文化シリーズ3「浜縮緬・その2」
vol.17 糸の世紀・織りの文化シリーズ4「湖北の養蚕・その1」
vol.18 糸の世紀・織りの文化シリーズ5「成田思斎の業績(湖北の養蚕・その2)」
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