1. HOME
  2. 歴史的分野
  3. 中世
  4. 戦国大名浅井氏と湖北
  5. 浅井氏とはどんな戦国大名か

中世

浅井氏とはどんな戦国大名か

戦国大名浅井氏は、亮政・久政・長政の三代にわたって50年の間、北近江(現在の長浜市・米原市域)を統治した戦国大名である。 最後の当主・浅井長政は、義理の兄・織田信長と4年間戦ったが、最終的に居城の小谷城攻められ自刃して果てた。しかし、長政と信長の妹・市との間に生まれた、淀・初・江の三姉妹は、その後の日本の歴史に大きな影響を与えていく。

浅井三代と北近江


浅井長政像(長浜城歴史博物館蔵)

鎌倉時代以来、北近江での政治の主導権を握っていたのは、近江国守護六角氏と同族の京極氏であった。 特に京極氏は北近江三郡の守護として、柏原(米原市柏原)や上平寺城(米原市上平寺)を拠点として当地を治めていた。 しかし、大永3年(1523)に至り、京極氏の兄弟間での争いやその家臣団内での争いが契機となって、北近江は戦乱においちった。 その中で、浅井亮政は京極家臣団の盟主となることに成功、天文3年(1534)までには京極氏に代わって新たな政権をうち立てた初代亮政や2代目久政の時代には六角氏の勢力に押されて、 浅井氏は北近江三郡(現在の長浜市・米原市)の領国を保つのがやっとだったが、3代目長政の時代には六角氏の勢力が衰えたこともあり、南は愛知郡、西は高島郡の一部までも、 その勢力を伸ばしている。さらに、甲賀郡の山中氏や、高島郡の朽木氏と同盟や領土保全の契約などを交している。 長政が家督を相続した永禄3年(1560)から、信長と敵対関係となる天正元年(1570)までは、浅井氏の全盛期であったと言えよう。

戦国大名の中で

浅井氏は戦国大名として、比較的小規模であった。 たとえば、甲斐国(山梨県)を統治していた武田信玄は、信濃国(長野県)の一部も勢力下においていた。 上杉家は越後国(新潟県)、朝倉氏は越前国(福井県)を統治している。関東の後北条氏は関八州とよばれる関東8ヶ国に勢力を及ぼし、西の毛利家も安芸国(広島県)だけではなく、山陽・山陰地方全体にも手を伸ばしていた。 それに比較して、浅井氏の領国は、近江国12郡の内の北3郡に過ぎなかった。
しかし、その領国内の南には、日本の東西交通の幹線である東国路(後の中山道)が通り、この道からは北近江を南北に貫通し、北陸地方へ抜ける北国街道が分岐していた。 北近江のこのような位置が、浅井氏に同盟を求めた信長の思いの背景にあったものと推察される。 さらに、天下統一を果たした織田信長・木下秀吉と、姉川合戦を皮切りに4年間にわたって戦ったこと、さらに浅井三姉妹が後世の歴史に大きな役割を果たしたこと等から、戦国大名・浅井氏の存在は、 日本の歴史上で非常に重要な位置を占めるようになったと見られる。

織田信長との戦い

元亀元年(1570)4月、信長の妹・お市と結婚し、織田家と同盟関係を結んでいた浅井長政は、信長が朝倉氏を攻撃すると、同盟を破棄し織田信長と敵対関係になる。 その年6月28日には姉川合戦があり、また冬にかけて志賀の陣で信長と戦った。 しかし、横山城や虎御前城を拠点として、木下秀吉を中心に攻撃を繰り返す信長軍によって、次第に囲みを狭められ、劣勢に追い込まれた。 ついに、天正元年(1573)9月1日、浅井氏は小谷城を総攻撃され、前日の浅井久政に続き、長政が自刃し浅井氏は滅亡した。

浅井三姉妹


長政と三姉妹の別れ

浅井長政とお市の間には、淀・初・江の三姉妹が生まれた。三姉妹は、賤ヶ岳合戦後の北庄落城までは母・お市と行動を共にするが、そこでお市が柴田勝家と共に自刃すると、秀吉によって保護されることになる。 淀はその後、秀吉の妻になり鶴松・秀頼と2人子を産んだ。秀吉死後は、豊臣家の力をそごうとする徳川家康と対立、元和元年(1615)に大坂の陣で秀頼と共に自刃した。 初は近江国の守護家である京極高次の妻となり、浅井氏時代に力が衰えていた京極家の再興に尽した。江は徳川幕府第2代徳川秀忠の妻となり、第3代将軍徳川家光を生むなど、徳川家の繁栄を確実なものとした。

※クリックで拡大

資料

別紙「浅井氏系図」

教科書との関連

  • 中学社会「歴史的分野」(日本文教出版)81頁《第3編「中世の日本」 ③室町幕府と下剋上 4立ち上がる民衆と戦国大名》
  • 106頁《第4編「近世の日本」 ①中世から近世へ 4天下統一と近世社会の基礎づくり》

参考文献

  • 小和田哲男『近江浅井氏の研究』(清文堂、2005年)
  • 長浜市長浜城歴史博物館『戦国大名 浅井氏と北近江ー浅井三代から三姉妹へー』(2008年)
  • 太田浩司『浅井長政と姉川合戦』(サンライズ出版、2011年)

図版・写真

  • ①浅井長政像 長浜市長浜城歴史博物館蔵
  • ②長政と三姉妹の別れ(『絵本太閤記』の挿絵を修正)