滋賀県内で特徴的にみられる年頭の予祝行事オコナイを、具体例を豊富に入れて紹介してある。興味深いのは同じ滋賀県内のオコナイであっても、湖北地域と甲賀地域ではその内容が異なることである。ここではその理由を天台宗寺院の存在と関連づけて説明している。また湖北地域のオコナイがその中心をお鏡餅に置いていること、巨大な餅や餅花により、民俗的な色合いを濃厚に見せていることなど、興味深い。
滋賀県の湖北地域には浄土真宗系の寺院が数多くあり、多くの門徒がいて日々の暮らしの中に真宗の文化が根付いています。歴史的にみても、戦国時代には湖北十ヶ寺と呼ばれる強力な寺院を中心に門徒が組織され、江戸時代に入っては長浜御坊大通寺といった中核寺院が建てられて、門徒達の心のよりどころとなりました。現在も回り仏や報恩講など、多彩な姿をみせる湖北の真宗文化についてと、それが生み出される背景となった歴史について、本書ではやさしく解説しています。
八木奇峰の代表作である京都御所の四季海辺図(冬景)をはじめ、元離宮二条城の本丸御殿の障壁画「萩図」と「花車図」、長浜曳山神戸町組孔雀山の舞台障子腰襖の「芙蓉四十雀図」・「紅葉鳩図」も掲載しています。また、最初の師匠である長浜町の京狩野派の画人「山縣岐鳳」の作品と詳細な伝記も載せています。また京都の師匠である四条派の松村景文の作品も紹介しています。八木奇峰の絵画のルーツにも迫れるように構成しています。
中川泉三(1869-1934)は、明治末から昭和初めに「近江坂田郡志」・「近江蒲生郡志」など、超一級の地方史を編さんしたことで知られる歴史家です。本書は、その生涯や交友関係を、実行委員会を構成する5館の展示内容や展示資料に則しながら解説した冊子で、この1冊で、近代滋賀県の地方史編さん事情がすべて分かります。また、明治から昭和に至る地方史研究と地域の関連を知ることができ、現在の歴史を生かした「地域づくり」の参考資料となります。 発行:中川泉三没後70年記念展実行委員会